電力系統制御工学講座 第4期報告会および電力設備診断講習会


基調講演
「電力機器・システム技術の最新動向と機器診断技術」   大久保 仁 教授 (名古屋大学)
 将来のエネルギーシステムにおいては,環境調和型エネルギーシステムが求められており,電気エネルギーシステムの最適化,環境調和型次世代電力機器・材料の実現,分散型エネルギー源の有効利用などの技術展開が期待されている。
 一方,近年の環境意識の高まりや電力自由化の進展に伴い,電力設備においては,高電圧大電力機器の延命化,ならびに余寿命診断に対する社会的ニーズが極めて高くなっている。本基調講演では,これらの技術展開に基づき,ハード要素技術からシステム評価に至る広い視点より,将来の最適なエネルギーシステムの構築を目指すという観点より,電力機器・システム技術と機器診断技術の動向について講演を行った。


第4期寄附講座報告
(1) 寄附講座の経緯と概要   匹田 政幸 教授 (九州工業大学)
 平成3年10月の開設以降,現在に至るまでの経緯と,教育研究方針ならびに活動内容のトピックスについて概要を報告した。
また,平成16年10月18日に開催した 「北九州国際ワークショップ2004 最新パワーエレクトロニクスの進展と国際規格 −EMIとインバータサージ−(KIWIS2004)」 について概要を報告した。

(2) インバータサージ絶縁   木村 健 前客員教授 (三菱電機株式会社)
 電気エネルギーの発生・利用形態が多様化する中なかでパワーエレクトロニクスの占める割合は一層高まっている。産業用から交通までインバータ駆動モータシステムは広く応用されている。近年のパワーデバイスの高電圧化高速化に伴い電磁気的ノイズ(EMI)とサージの課題克服が従来以上に重要となっている。本寄附講座第4期では研究活動の一つとして,インバータサージのモータ絶縁への影響を基礎的に検討したので,その研究概要について報告した。

(3) 電力システム動特性解析   渡邊 政幸 助手 (九州工業大学工学部寄附講座)
 近年,広域的なデータ収集に基づくリアルタイムの電力システム監視・制御技術が注目されてきている。GPS時刻同期型位相計測装置を利用した電力システムの動特性解析,安定度監視,安定化制御手法に関する研究についてこれまでに得られた成果を報告した。一方,他大学との共同により,同期発電機動特性解析ツールの開発を進めており,一連の系統シミュレーションが実行できる環境を構築できたので,その概要を紹介した。

技術講習会
(1) 変電機器の絶縁診断 〜電力経済工学の観点から〜   松本 聡 客員教授 (九州工業大学工学部寄附講座)
 電力流通設備は高信頼性を確保しながら,従来にも増して効率的運用を強く要請されている。このような状況下において,電力流通設備やプラントに対する設備投資や保全計画は,技術的側面ばかりでなく経済的側面ならびに企業の社会的責任などをバランスさせながら合理的な意志決定のもとに策定を行う必要がある。この目的を達成するためには,保有する要素技術の高度化は勿論のこと,個々の機器に関する情報の共有化と有効活用を図るためのデータベース構築ならびに情報ネットワーク技術の有効活用が必要である。さらにこれらに加えて,アセットマネジメントの視点から技術者に対しても経済学と財務に関する基礎知識が必要となっている。ここでは,これら関連する分野をまとめて 「電力経済工学」 と名付けた。
 電力経済工学では品質工学とリスク管理を一体化して考える必要があり,品質に関しては技術品質に加えて安全性の確保,耐久性の確保,フレキシビリティの確保,運用面における利便性や快適性の向上,あるいは施設イメージの向上が含まれる。
 また,リスク管理については機器のみならず環境への配慮なども考慮すべき事項である。
 ここでは,絶縁診断技術とこれらの関係について概要を報告した。

(2) 回転機の絶縁診断   木村 健 前客員教授 (三菱電機株式会社)
 発電所の発電機はもとより全産業分野において多数の多様な回転機が使用されている。固定子コイルの電気絶縁は長期運転中に電気・機械・熱的ストレスによる複合的な劣化を受け,最終的には絶縁破壊に至る。回転機コイルは定格電圧に応じた絶縁構成が採用されているが,そのミクロ構造に基づいた劣化メカニズムが解明されている。回転機の予防保全上,欠陥を含む固体絶縁の診断技術は重要であり,特に欠陥部で発生する部分放電の挙動について良く理解することが重要である。劣化メカニズム,部分放電挙動とともに,停止中および運転中(オンライン)絶縁診断技術について概説した。

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