
電力系統制御工学講座第3期報告会
〜 電力システムのさらなる高機能化と電力技術者育成について 〜
1.基調講演
「電力技術者の育成について 〜大学の視点から〜」 東京大学 日邦彦 教授
若年層の理工系離れや“もの”離れの傾向が見られる中で,電力分野だけでなく電気工学の広い分野において若手人材の確保が将来困難になるのではないかと危惧されている。
その中で人材育成をどのように行っていくか,という課題が電気学会を中心に種々の場で議論されている。
この議論を通じて痛感することは,電気工学教育の変革スピード以上に,それを取り巻く周囲環境が大きく変化していることである。
例えば,学生が巣立っていく先である産業界は,規制緩和やグローバル化のうねりの中で,改革や再編成が急速に進展し,競争力の強化が求められている。
一方で,大学に入ってくる高校生の教育方針を定める学習指導要領は,ゆとりある教育を目指して大幅な改革がなされている。
こうした環境の変化にあって,大学自体は,大学院重点化,自己点検・外部評価の導入,国立大学の法人化,21世紀COE,JABEEによる技術者教育の認定など,制度的な変更が先行してしまい,教育の基本を成すアカデミックプランの確立が後れをとっていると言わざるを得ない。
電力技術者の育成においても,上記の議論はそのまま当てはまるわけで,21世紀の社会ニーズに応える教育が提供できるかどうか,大人の視点から論じてみたい。
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2.第3期寄附講座報告
(1)寄附講座の経緯と概要 九州工業大学 匹田政幸 教授
1991年10月の開設以降,現在に至るまでの経緯と,教育研究方針ならびに活動内容のトピックスについて概要を報告する。
また,2001年11月16日に開催した「電力プラントのオンライン監視に関する北九州国際シンポジウム(KISOMEPP)」について概要を報告する。
(2)電力機器の絶縁技術 池田正巳 前客員教授
最近の電力機器のトピックスである変圧器の急峻波(VFT)問題,気中シールドの電界最適化問題,CVケーブル接合部の絶縁問題,直流油入絶縁技術についての研究成果を概括する。加えて,最近の変圧器技術のトピックスについて講演する。
(3)電力系統解析と技術者育成 萩森英一 前客員教授
電力系統の多様化,高密度化が進むにつれて系統全体を相応のレベルで把握した上で研究・運用に当たる技術者が求められよう。また途上国においても今後数多くの技術者が求められよう。開発以来20数年になるEMTPは「実験」の困難な電力系統現象のシミュレーションを通じて,効率の良い技術者教育の為の安価にして強力なツールとなることが期待できる。ここではいくつかの例を挙げて説明する。
(4)回転機の絶縁診断 木村健 客員教授
発電機のコイルは鉄心部とコイルエンド部で構成されるため,絶縁技術にとっては 1)部分放電パルスのコイル伝播解析と 2)コイルエンド部の電界緩和が他の電力機器にない課題である。本件に関する研究成果を報告する。加えてインバータ駆動モータにおける繰返しサージ電圧下での部分放電計測技術について最近の研究成果とIEC国際活動について報告する。
(5)高機能電力システム 松本聡 客員教授
電気エネルギーの安定供給ならびに高品質・安価な電力供給を使命として,高度な技術を駆使した巨大な電力システムが構築されている。これを支える送変電機器の技術開発の現状,ならびに今後経年機器増加に伴い必要性が増すと考えられる診断技術の研究開発動向について紹介する。また,最新のパワエレ技術や新エネルギー・分散電源開発,あるいは今日の電力自由化に対する技術動向について紹介する。
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